上野公園で秋に桜「こんなに咲くのは初めて」|原因は暑さだけではなかった

10月も後半。上野公園といえば、そろそろイチョウやモミジの色づきが気になる頃ですが、2026年は少し様子が違います。春に咲くはずのソメイヨシノやヤマザクラが、10月に花をつけていることが確認されました。

タイトウタイムズのナッシーです。2026年10月21日の東京都心は最高気温30.3℃で、観測史上もっとも遅い真夏日になりました。となると「暑すぎて桜が春と勘違いした?」と思いたくなりますが、調べてみると原因はそれだけではありませんでした。

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上野公園で10月にソメイヨシノが咲いた

報道では10月20日、上野恩賜公園で季節外れのサクラが確認され、木によってはスタッフが目視できるだけで50輪近く咲いていました。ソメイヨシノだけでなく、ヤマザクラにもまとまった開花が見られています。春の花見とは違い、枝の一部に花が集まる咲き方です。

長年、上野公園のサクラを見守ってきた「上野桜守の会」の木村雄二さんも、10月にこれほど咲いているのは初めて見たと話しています。ただし、すべての木が咲いているわけではなく、花が多い木とほとんど咲いていない木があるのがポイントです。

上野恩賜公園には約1200本のサクラがあり、春は都内有数の花見スポットです。本来なら秋は紅葉へ向かう時期。それだけに、葉が少ない枝に白い花がついている光景は、見慣れた上野公園でもかなり不思議に見えます。秋の散歩で見つけたら、二度見してしまいそうです。

原因は「暑かったから」だけではなかった

サクラの花芽は、春になって突然できるわけではありません。翌年に咲く花の芽は前年の夏ごろにはほぼできていて、その後はすぐ開かないように休眠へ入ります。ここで重要になるのが、枝についている葉です。

専門家の説明では、通常は葉からアブシシン酸という植物ホルモンが供給され、花芽の成長が抑えられます。ところが葉が早い時期になくなると、その仕組みがうまく働かず、花芽が秋にも成長を続けてしまうことがあります。

上野公園では、ここ数年「モンクロシャチホコ」という毛虫がサクラの葉を食べる被害が見られるとのこと。花が咲いた木は葉が少なく、枝に葉柄だけが残っている状態も確認されており、早い時期の落葉が今回の開花の大きなきっかけとみられています。

  • 夏ごろまでに翌春の花芽ができる
  • 葉があると花芽は休眠状態に入りやすい
  • 毛虫などで葉が早くなくなると休眠が不十分になることがある
  • そこに暖かい日が続くと、一部の花芽が秋に開くことがある

では10月21日の30.3℃は関係なかったの?

関係がないわけではありません。10月21日の東京都心は午後1時半前に30.3℃まで上がり、1875年の統計開始以来、もっとも遅い真夏日になりました。10月下旬なのに半袖で歩けるほどの気温ですから、かなり異例です。

この日は日本海の低気圧に向かって南から暖かい空気が流れ込み、東京だけでなく大阪や名古屋などでも季節外れの真夏日となりました。全国では157地点で最高気温30℃以上を観測したと報じられています。東京だけが特別に暑かった一日ではありません。

ただ、順番としては「暑さで突然サクラが咲いた」のではなく、葉を失って休眠しにくくなった花芽に、高い気温が開花の最後の後押しをしたと考えるのが分かりやすそうです。ここを一緒にしてしまうと、今回の現象を少し単純化しすぎます。

「異常気象で桜が狂った」と決めつけるのも違う

10月にサクラが咲いていると、どうしても「異常気象のせいでは?」と考えます。実際、2026年10月は暖かい日が目立ち、21日には東京で最遅の真夏日まで記録しました。気温が開花に関わっているのは確かです。

一方、サクラを30年以上研究している専門家は、葉が早く失われて秋に花が咲く現象そのものについて「そう珍しくない」と説明しています。今回の上野公園では、葉が落ちた理由として暑さよりも虫による食害が強く疑われています。

つまり、季節外れの高温と虫による早期落葉は分けて考えた方がよさそうです。「30℃になった翌日にいきなり咲いた」という話でもありません。上野公園では10月中旬にはすでに数輪の開花が報じられていました。

ナッシー

桜が咲いた=全部が猛暑のせい、ではないんですね

来年の春、上野公園の桜は少なくなる?

ここが一番気になります。秋に咲いてしまった花芽は、同じ芽が翌春にもう一度咲くことはありません。ですから、その分だけ見れば「春の花を先に使った」ということになります。

ただし、専門家が上野公園の木を見たところ、まだ咲いていない花芽は数多く残っていました。現在咲いているのは全体の一部で、残った花芽は通常どおり春に開くとみられています。そのため、来春の花見に大きな影響が出る可能性は低いという見方です。

「秋に咲いたから、2027年の上野公園は花見ができない」という心配まではしなくてよさそうです。ただ、個々の枝では秋に開いた分だけ春の花数が減ることはあります。公園全体と一本の枝では、話を分けて考えたいところです。

上野だけではなく旧岩崎邸庭園でも確認

今回の季節外れの開花は、上野公園だけの話でもありません。台東区内では旧岩崎邸庭園でもソメイヨシノの開花が確認され、千代田区の日比谷公園でも同じような報告が出ています。

台東区で見ると、上野恩賜公園と旧岩崎邸庭園はどちらも上野周辺。局地的に一つの木だけが変わったというより、条件がそろった木で似た現象が起きているように見えます。ただし、花の数や咲き方は木ごとに違います。

これから見に行こうと思う人は、「春のように一面満開」を想像しない方がよさそうです。確認されたのは一部の木や枝での開花ですし、自然の花なので数日で状態も変わります。見つけられたら少し得した、くらいの感覚がちょうどよさそうです。

「十月桜」という秋咲き品種とは別の話

ここで少しややこしいのが、そもそも秋に咲くサクラもあることです。たとえば「ジュウガツザクラ」は、その名の通り10月ごろから冬にかけて断続的に咲き、春にももう一度花をつける二季咲きの品種です。

東京都も10月に見頃を迎える花としてジュウガツザクラを案内しています。ですから、10月に桜の花を見つけたというだけなら、必ずしも季節外れとは言えません。品種を見ないと判断できないんですね。

ただし今回、上野公園で話題になっているのは、春に咲くソメイヨシノやヤマザクラの一部です。秋咲き品種が普通に咲いた話ではなく、本来は春に咲く花芽の一部が秋に開いた「返り咲き」に近い現象として見る必要があります。

もし秋の桜を見つけたら、花より葉も見てみたい

今回のニュースで面白かったのは、花だけを見ていても原因が分かりにくいことでした。咲いている木には葉が少なく、咲いていない木にはまだ葉が残っている。この違いから、休眠と早期落葉の関係が見えてきます。

枝に葉っぱそのものはないのに、葉の付け根にあたる細い葉柄だけが残っていれば、虫に食べられた可能性を考える手掛かりになります。もちろん、公園の木なので枝を折ったり触ったりせず、離れて観察するだけで十分です。

10月21日に東京で30.3℃というニュースと、上野公園の桜。並べると「暑さで桜が咲いた」で終わりそうですが、実際には虫、落葉、植物ホルモン、気温が重なった話でした。春の花見では気にしなかった葉っぱまで、次に上野公園を歩くときは少し見方が変わりそうです。

情報は更新時点のものです。最新情報は公式サイトもあわせてご確認ください。

この記事を書いた人

ライター・(左から)ハル、ナッシー

台東区に暮らすハルです。地域情報メディア『タイトウタイムズ』で、地域の日常に役立つ情報をナッシーとともにお届けしています。

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