旅先の文具店に入ったら、その土地でしか見かけない不思議な色のインクが並んでいる。最近、そんな「ご当地インク」が文具好きの間で一つのジャンルになっています。名前を見ると、桜や果物、名所までインクになっていて、なかなか面白い世界です。
タイトウタイムズのナッシーです。では台東区にも浅草や上野をイメージしたインクがあるのか。気になって調べたところ、既製のご当地インクは確認できなかったものの、蔵前には自分で好きな色を調合してオリジナルインクを作れる場所がありました。
そもそも「ご当地インク」って何?
ご当地インクは、地域の風景、名所、特産品、植物などをイメージして作られた万年筆インクです。「ご当地」という名前の通り、その土地にある文具店が企画するオリジナル商品が多くあります。
たとえば桜ひとつを取っても、宮城県の一目千本桜、秋田県角館のしだれ桜、山形県の伊佐沢の久保桜など、それぞれの土地の景色を違うピンク色で表現しています。同じ桜でも色が同じではありません。
色だけでなく、「なぜこの色なのか」という物語まで含めて楽しめるのが面白いところです。単なるピンクや青ではなく、場所の名前や思い出とセットになったインクです。
名物までインクになる。すいかやレモン牛乳も
ご当地インクになるのは景色だけではありません。地域の食べ物や特産品まで色になります。ジョイフル本田では、関東各地の自然や名物をモチーフにしたシリーズを展開しています。
2026年には、すいかの果肉を表現した「すいかレッド」や果皮をイメージした「すいかグリーン」も復刻。千葉県では房総の菜の花をイメージした「小湊菜の花イエロー」も登場しています。
栃木では、いちごやレモン牛乳をモチーフにしたインクまであります。こうなると「何色を買うか」というより、「どの土地の物語を持ち帰るか」に近い感覚ですね。
ご当地インクは今も増えている?2026年にも全国から集合
一時的なブームなのかと思いましたが、2026年もかなり盛り上がっています。8月に開催された「とちぎ文具博2026」では、全国各地のご当地インクを集めた「とちぎインク沼2026」が開かれました。
青森、宮城、福島、新潟、群馬、長野、静岡、岐阜、京都、兵庫、岡山、広島、香川、長崎、沖縄など全国の文具店が参加。同じインクでも、店や地域によってテーマはかなり違います。
セーラー万年筆の公式メディアでも2026年3月にご当地インク特集が組まれています。文具好きの中だけの一過性のネタというより、一つの楽しみ方として定着してきたようです。
では台東区の「浅草インク」「上野インク」はある?
ここが一番興味あるところです。2026年10月18日時点で公式ショップやメーカー情報を調べた範囲では、「浅草」「上野」「台東区」を名前やテーマにした既製のご当地インクは確認できませんでした。
インターネットには過去の商品や限定品も多く残るため、「浅草っぽい色だから今年も買える」とは限りません。販売を確認できないものを台東区のご当地インクとして紹介するのは避けました。
ただ、そこで終わらないのが台東区です。ご当地インクを探すというより、自分で「台東区の思い出の色」を作れる店が蔵前にあります。
蔵前なら、自分だけのインクを作れる
台東区三筋にある「Inkstand by Kakimori」は、オーダーメイドの万年筆インクを自分で調色できるショップです。カキモリの店内にあり、現在は事前予約制で体験できます。
用意された14色から2~3色のベースを選び、「青を2滴、黄色を1滴」と少しずつ混ぜます。紙に試し書きをしながら濃さや色味を変え、納得できる色になるまで自分で調整していきます。
作りたい色の写真や現物を持って行くこともできます。たとえば隅田川の夕暮れ、不忍池の蓮、浅草の提灯など、自分が「台東区らしい」と思う色を目標に作ることもできるわけです。
料金は5,500円。完成までどのくらいかかる?
2026年10月時点のオーダーインクは、1瓶5,500円。容量は約35mlで、万年筆用の水性顔料インクです。2瓶目以降は1瓶3,000円となっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 料金 | 1瓶5,500円 |
| 容量 | 約35ml |
| 自分で調色する時間 | 約45分 |
| スタッフの製作時間 | 約60分~ |
| インク | 万年筆用水性顔料インク |
| 予約 | 事前予約制 |
自分で色を決めた後は、スタッフがその配合をもとに本番のインクを製作します。合計では105分以上が目安。製作中は店内を見たり、外出したりすることもできます。
作った色を使い切ったら、もう同じ色は作れない?
せっかく作った色だけに、使い切るのがもったいなくなりそうです。この点もちゃんと考えられていて、Inkstandでは作ったインクのレシピを3年間保管しています。
完成時にもらうレシピカードのシリアルナンバーがあれば、同じ配合のインクを再注文できます。リピートオーダーは35mlで3,000円。気に入った色を一度きりにしなくて済みます。
ハル旅の思い出の色を、あとから同じ色で買えるのはちょっといいですね
カキモリには完成品のインクもある。でも「ご当地インク」とは別
自分で調色するのは難しそう、という人にはカキモリのオリジナルインクもあります。「ぽっ」「とろり」「からり」といった日本語のオノマトペをテーマにした10色の顔料インクです。
こちらも蔵前の店で扱われていますが、「浅草」や「蔵前」の風景を表したご当地インクとして販売されている商品ではありません。この部分は分けて考えた方がよさそうです。
ただ、地域をテーマにした既製品を探す楽しさと、自分で思い出の色を作る楽しさはかなり近いものがあります。台東区では後者を実際に体験できる、というのが面白いところです。
「ご当地インク」は何に使う?万年筆だけじゃなく色そのものを楽しむ
インクを買っても、万年筆を毎日使わないから余りそう。私も最初にそこが気になりました。でもインク好きの世界では、文字を書く以外にも色見本を作ったり、つけペンで一言だけ書いたりして楽しむ人がいます。
同じインクでも、紙やペン先、塗る面積によって見え方が変わります。瓶の中では濃く見えた青が、紙に書くと淡い水色になることもあり、そこもインクならではの面白さです。
ご当地インクなら、旅行の日付やその土地で食べたものを書いておくのも相性がよさそうです。色そのものが、その場所を思い出すきっかけになります。
台東区なら「買う」より「自分のご当地色を作る」のも面白い
全国には、桜、果物、名所などをテーマにしたご当地インクがたくさんあります。旅行先でその土地の一瓶を探すのは、普通のお土産とは少し違った楽しみ方です。
一方、台東区では2026年10月時点で「浅草インク」のような既製品は確認できませんでした。その代わり蔵前では、写真や思い出をもとに、自分自身で一色を作れます。
不忍池の緑でも、浅草の朱色でも、夕方の隅田川でもいい。正式な「ご当地インク」ではありませんが、台東区で見た景色を自分だけのインクにする。ご当地インクが気になったなら、そんな楽しみ方もありだと思います。













